「かゆい、かゆい」アトピー性皮膚炎
ブログ2019.06.06
こんにちは。理事の下村薫です。
梅雨入り前だというのに、5月の終わりは30度を超える日が続きましたね。
暑くなってくると、アトピー性皮膚炎のご相談が増えます。アトピー性皮膚炎はお子さんから大人まで幅広い年代でお困りの方が多い病気です。
また、なかなか治りづらく、かゆみのせいで勉強や仕事・睡眠に支障が生じたりと、心理的なストレスが多いことが報告されています。
今回は、アトピー性皮膚炎についてお話ししたいと思います。
アトピー性皮膚炎の診断
アトピー性皮膚炎は以下の3つの基本項目を満たしたときに診断されます。
- かゆみ
- 特徴的な皮疹と分布
- 慢性・反復性経過
この際、症状の軽さ、重さは問いません。
皮疹は主にひじやひざ裏などの屈側部に症状が現れます。
年齢による特徴もあり、乳児期には頭、顔から皮疹が出現し、体幹や四肢に拡大します。
幼小児期には頸部、四肢関節部、体幹などに現れます。
思春期・成人期には顔面を含む上半身に皮疹が強くなる傾向があります。
アトピー性皮膚炎の診断は比較的すぐつきやすいですが、別の病気が隠されている可能性もありますので、まずはご相談ください。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の治療では、スキンケア、悪化因子の検索と対策、薬物療法が大切です。
一つずつみていきましょう。
スキンケア
乾燥肌などで皮膚のバリア機能が弱っているため、ヒルドイドと呼ばれる保湿剤などでバリア機能を回復させる必要があります。
悪化因子の検索と対策
汗や髪の毛との接触、衣類との摩擦など、皮膚への刺激はよくありません。
汗をかくこと自体は良い事ですが、汗をかいた後そのまま放置しておくことは悪化の原因となります。
汗をかくことを避けるより、かいた後の汗対策（シャワーを浴びたり、濡れた衣類の交換など）を行うと良いでしょう。
唾液が悪化因子となることもありますので、お子さんのよだれなどは、こまめに洗い流すか拭き取るかしましょう。
髪の毛は短くする、または束ねると良いでしょう。
衣類はウールなどを避け、綿100％など刺激の少ないものに変えることでかゆみを減らすことができます。
薬物療法
アトピー性皮膚炎には主にステロイド外用薬を使用します。
ステロイド外用薬はその強さによって5段階あり、皮疹の重症度に見合ったランクの薬剤を適切に使用することが大切です。アトピー性皮膚炎は慢性、反復性なので根気強く続けましょう。
また、皮疹が良くなった後も再燃を防ぐために隔日、週2回など間隔を空けながら使用する場合もあります。
ステロイド外用薬以外にも、部位や症状にあわせてタクロリムス軟膏や抗ヒスタミン薬やシクロスポリンの内服、光線療法などを使用します。
皮下注射のデュピクセント（デュピルマブ）は2018年に保険適用になりました。
当院では扱っておりませんが、他院にご紹介もできますのでご相談ください。
アレルギーマーチ
お子さんで、アトピー性皮膚炎のあとに食物アレルレギー、喘息、アレルギー性鼻炎と、成長するにつれ、次々とアレルギーを発症することがあります。これをアレルギーマーチと言います。
最近の研究では、小さいころからアトピー性皮膚炎の治療をすることで、将来、他のアレルギー性疾患が発症するのを予防できるという報告があります。
これからの研究が待たれるところです。
アトピー性皮膚炎には皮膚の細菌も影響しています
年齢や部位によって異なりますが、皮膚には様々な微生物が常在菌として存在し、絶妙なバランスで皮膚の健康を保っています。これらのバランスが崩れると、正常では検出されない菌が見られたり、もともと生息する菌の量が増えたりして、アレルギー症状が現れるのです。
アレルギーとは異なりますが、Crohn病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の治療においても、腸内細菌の移植や糞便移植治療など、体内の常在菌のバランスを整える治療が効果的と言われてきています。
皮膚の常在菌のバランスを整える、常在細菌叢の治療もこれから注目を集めてくる分野かもしれません。
今回はアトピー性皮膚炎の診断と治療、またアレルギーマーチと皮膚細菌叢についてお話ししました。
これからの季節は気温も上がり、汗で皮膚が刺激されてかゆみが悪化することが多くなります。
かゆみで眠れなかったり、仕事や勉強に身が入らないなどのお悩みもよくいただきます。
かゆさを我慢して一人で抱え込まず、当院に一度ご相談ください。
草花クリニックでは、より心地よい毎日を送れるようお手伝い致します。
