便秘のトリセツ【診断編】
ブログ2024.09.09
こんにちは!理事の下村薫です。
皆さんは、長い間排便されない症状や、排便されないことで腹痛・吐き気を感じることはありませんか?
おなかが張って、冷や汗が出てくることもあるような不快な「便秘」。
長く続くと食欲不振を引き起こし、さらに便が出にくくなる悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。
「便秘くらいで病院に行くのもな」と我慢されがちな症状ですが、長く続くと辛いのはもちろん、病気が原因の便秘もあるため、健康に過ごす上でしっかり確認しておきたい症状の一つです。
この機会に、改めて便秘としっかり向き合ってみましょう。
「便秘」とは
どこからが便秘?
突然ですが、クイズです。
「正常なお通じ」とは、どのくらいの頻度だと思いますか?
- 週に3回お通じがある
- 毎日お通じがある
- 毎食後お通じがある
「慢性便秘症診療ガイドライン2017」では、便秘は「本来、体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されており、排便頻度は明確になっていません。
これは「正常なお通じは排便頻度だけで定義できるものではない」ということ。
便秘かどうかを判断するためには、排便頻度の他に排便のしづらさや残便感などを総合的に判断する必要があります。
したがって、上記のクイズは「1~3すべて不正解」。ちょっと意地悪なクイズでした。
便秘の症状
それでは、どういった症状が「便秘」にあたるのでしょうか?
まずは一般的な便秘「機能性便秘」をご紹介します。
機能性便秘の症状は大きく分けて「排便回数減少型」と「排便困難型」の2タイプです。
「排便回数減少型」は水分が足りないことで便が固くなり、排便回数が減ってしまう便秘のことを言います。お腹の張り(腹部膨満)や腹痛があり、排便回数が週3回以下の場合に当てはまります。
一方、「排便困難型」は便がうまく排せつできないため、柔らかい便でも排便困難なケースもあります。
排便の際に過度のいきみが必要だったり、排便しても残便感があったりする場合には、排便できていても便秘です。このタイプの便秘は排便時の肛門の痛みがある場合もあります。
「機能性便秘」で一時的に排便しにくくなっている場合などには水分を取ったり運動をしたりすることで改善される場合もありますが、中には排便に関連する機能の障害や疾患が原因となっている場合もあります。
便秘以外の症状が出ることも多いため、症状とあわせて見ていきましょう。
便秘の原因となる病気
急に始まった便秘や血便、吐き気の症状
大腸がん
便秘が急に始まってどんどん悪化している場合や、血便、体重減少、嘔吐・吐き気がある場合には「大腸がん」の可能性があります。
特に家族歴や潰瘍性大腸炎の既往がある方は大腸がんになりやすい傾向があるため、要注意です。
早期発見することで内視鏡での切除がしやすくなるため、症状が合致したらすぐに病院へ受診しましょう。
初期段階では無症状であることも多いため、大腸がんになりやすい50歳以上で大腸内視鏡をしたことがない方も、この機会に一度検査してみることがおすすめです。
便秘の他に体重増加や寒がりなど幅広い症状
甲状腺機能低下症
「甲状腺機能低下症」は甲状腺の働きが落ちることで代謝が低下し、様々な身体の機能も低下する病気で、便秘の他に体重増加や皮膚の乾燥、寒がり、声のかすれ(嗄声)など幅広い症状が見られます。
重症化すると意識障害を引き起こす状態になることもあるため、注意が必要です。
便秘や嘔吐、多尿などの症状
高Ca血症
血液中のカルシウム濃度が極めて高い状態になる「高Ca血症」も便秘を起こしやすい病気です。
軽度ではほとんどが無症状で、進行すると便秘や食欲低下、体重減少、嘔気、多尿などが見られるものの、ありふれた症状なので気付かれにくい病気でもあります。
こちらも重症となると意識障害を起こすこともあるため、「大きな症状がないから」と自己判断せず、病院へご相談ください。
体の一部のふるえや動作の変化の症状
パーキンソン病
国が定める指定難病のひとつで、体の動きに障害が出る「パーキンソン病」も、便秘の症状がよくみられます。
パーキンソン病は体の一部のふるえ(振戦)から症状が始まることも多く、歩行が小刻みになるなど動作が小さく・遅くなることや、表情が乏しくなる仮面様顔貌なども代表的な症状です。
体の運動機能障害が進行してしまうと元の状態に戻すことが難しくなってしまうこともあります。早めに治療を始めることで生活の質を維持しやすくなりますので、早期の発見と治療が重要です。
肛門にイボ状の腫れがあり痛みがある
外痔核
「外痔核」とは、直腸と肛門の境目にある「歯状線」よりも外側にできた痔のことで、排便時のいきみすぎなどが原因で発症します。
痛みを伴うため排便を避けてしまう方がいらっしゃいますが、便を我慢することも便秘の原因に。お薬や生活習慣の改善で改善できますので、お早めにご相談ください。
心理的要因も便秘の原因に
過敏性腸症候群(IBS)
「脳腸相関」という言葉があるくらい、脳と腸は密接に影響を及ぼしあっていると言われています。
うつ病などの精神疾患のある方やストレス、不安などの心理的要因がある方は腸の働きに影響が出やすいと言われており、繰り返す便秘に悩まされている方も少なくありません。
特に抑うつ、不眠、食欲低下などの症状がある場合には、便秘の原因となりやすいので要注意です。
過敏性腸症候群は、腹痛が直近3か月で1週間につき少なくとも1日以上を占め、「(1)排便によって腹痛が緩和される」「(2)排便頻度が症状とともに変わる」「(3)便の形状(外観)が症状とともに変わる」のうち、2項目以上の特徴を満たすことが診断基準(Rome IV 基準)となっています。
心理的要因は出る症状も必要な治療も人それぞれです。生活環境の改善や投薬などによる治療が必要な場合もありますので、是非一度ご相談ください。
薬の副作用でも起こる便秘
薬剤性便秘
抗精神病薬や抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、循環器作用薬(降圧薬(Ca拮抗薬)や抗不整脈薬、血管拡張薬など)、鉄剤などで起こりやすく、特に三環系抗うつ薬は便秘になりやすいと言われています。
便秘が始まった場合には、お薬が原因となっていないかも確認していきましょう。
便秘のこと、お気軽にご相談ください
便秘は体調や生活の変化でも表れることのある症状のため、「これくらいで病院に行くのは恥ずかしい」と思いがちですが、今回ご紹介したように大腸がんなどの重大な病気が原因となっている可能性もあります。
特に便に血が混じる、貧血が見られる、体重が減ったなど上記で紹介した症状が見られる場合には重大な病気が潜んでいる可能性もありますので、すぐにご相談ください。
次回は便秘の解消法や治療についてご紹介していきます。是非次回もご覧ください。
便秘のトリセツ【解消編】
また、2024年の夏は連日の暑さにも負けないオリンピック・パラリンピックの白熱ぶりに、私も毎朝ニュースを見ながら一喜一憂していましたが、メダル獲得の嬉しいニュースがある一方、熱中症・新型コロナウイルスなどの感染症も注目されています。
各々の環境にあった対策をして、夏を乗り切りましょう!