湿疹とアトピー性皮膚炎の皮膚のかゆみ
ブログ2019.03.12
こんにちは。理事の下村薫です。早春の息吹が感じられるようになりましたね。
今日は冬に増加し、長引く皮膚がかゆくなる病気と、これから春先にかけて多くなるアトピー性皮膚炎についてお話ししたいと思います。
全身がかさかさしてかゆい!―皮脂欠乏性湿疹―
冬に増加する、全身がかゆくなる疾患で代表的なものとして「皮脂欠乏性湿疹」があります。
皮脂欠乏性湿疹は、年齢を重ねたり、お風呂で皮膚を洗いすぎたりすることで、皮膚が乾燥してかゆみを感じ、かいてしまうことで湿疹となる病気です。
皮脂分泌の少ない思春期前のお子さんは顔面を含む全身に湿疹が生じます。高齢者では皮脂の少ない手足、特にすねに湿疹が生じることが多いです。
皮脂欠乏性湿疹の予防と治療
皮脂欠乏性湿疹の予防には保湿薬、治療にはステロイド外用剤を使います。かゆみに対して抗ヒスタミン薬を内服する場合もあります。
生活のなかでできることは体の洗い方を工夫することです。
体を洗う時は石鹸を手のひらで泡立てて、手のひらでやさしく洗うようにしましょう。
乾燥した皮膚がガサガサして気になるかもしれませんが、ごしごしと肌を強くこするのは控えてください。ナイロンタオルを使った垢すりもおすすめできません。肌の乾燥が悪化する原因になります。
身体が洗えたら、石けん成分が皮膚に残らないよう十分すすぎ洗いをし、やさしくタオルで押さえるようにして水分をふき取りましょう。
乾燥しやすい手を守るには
乾燥しやすい手の皮膚を守るためには、スキンケアもとても大切です。
手に塗る量の目安は、軟膏・クリームが人差し指の先から第一関節の長さまで出したくらい、ローションでは1円玉くらいの量です。
この量で手のひら2枚分を塗るくらい、たっぷり使うことが治療を効果的にするコツです。
軟膏・クリーム・ローション等をお好みでお使いいただき、一日三回を目安にこまめに塗ることで、皮膚を保湿していきましょう。
皮脂欠乏性湿疹と似た症状の病気 疥癬
皮脂欠乏性湿疹と紛らわしい病気に、肉眼で発見出来ないほど小さなヒゼンダニというダニが人の皮膚に寄生しておこる「疥癬(かいせん)」があります。
疥癬は全身にかゆみの出る感染症で、高齢者に多く見られます。
治療は軟膏と薬の内服でしていきますが、症状がでるまでの潜伏期間が1ヶ月ほどあるため、介護施設等で発生すると次々に感染が広がっていきます。
1人疥癬に感染した方が見つかった場合、周りの方にも気を配っていくことが大切です。
手がかゆい! ―手湿疹―
ここまでに紹介してきた「皮脂欠乏性湿疹」や「疥癬」は全身に症状が出やすい病気でしたが、冬場を中心に手が荒れる「手湿疹」も辛い病気です。
手湿疹には大きく分けて刺激性とアレルギー性があります。
刺激性の手湿疹
刺激性は水仕事などで皮膚表面の角質がとれてしまうことが原因とされていて、主婦の方に多いので主婦湿疹とも呼ばれます。
予防はハンドクリームを頻繁に塗ることです。回数が大切なので、こまめに塗るよう心がけましょう。
アレルギー性の手湿疹
アレルギー性は文字通り、アレルギーが原因の湿疹です。原因は人によって違いますが、花粉やハウスダストよりも金属や洗剤などの化学物質で引きおこされる場合が多く、ラテックスのゴム手袋を使っている場合に生じるという方もいます。
アレルギー性の手湿疹を直すには、なるべくアレルゲンを避け、皮膚の炎症を抑える薬等を外用・内服していきます。
原因が分からないと注意して避けることも出来ません。手のかゆみの症状が出た方は、一度皮膚科へご相談ください。
手湿疹と似た症状の病気 手白癬
手湿疹と似ている病気には手白癬があります。手白癬は足白癬、いわゆる水虫に薬を塗る時、手にも感染してしまうことで起こります。手湿疹とは異なり、片方の手だけに症状が出るのが特徴です。
アトピー性皮膚炎
最後に、冬から春先にかけてや夏に多く、強いかゆみを伴う病気に「アトピー性皮膚炎」があります。
全身に湿疹は出ますが、首、うなじ、肘の内側、膝、脇の下などに多く、左右対称なことが特徴です。
慢性的に症状が繰り返し、乳児期なら2ヶ月、それ以外の方は6ヶ月以上続くと診断がつきます。
アトピー性皮膚炎は、遺伝的に肌のバリア機能が弱い人に多く見られる病気です。
皮膚が刺激された時、免疫が過剰に反応することで皮膚が炎症を起こし、かゆみや炎症といった症状が現れます。
また、1歳未満の小児では腸内細菌の異常やビフィズス菌の低下もアトピー性皮膚炎の危険性を高めると言われています。アトピー性皮膚炎の方は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎などにかかったことがあったり、ご家族に同じような病気の方がいらっしゃることも多いです。
アトピー性皮膚炎の予防と治療
アトピー性皮膚炎の治療はステロイド外用、免疫抑制薬外用、抗ヒスタミン薬内服、保湿剤などです。予防はかきむしるのを控え、また爪を清潔に保つことです。
白内障を合併することがあるため、目の症状にも注意していく必要があります。
症状の原因を把握して正しく治療しよう
今回は冬から春にかけてご相談が多くなる、皮膚のかゆみについてお話ししました。
今回お話ししたような病気の方が多いですが、他の病気が隠れている可能性もあります。正しい診断が正しい治療につながりますので、かゆみでお困りの際は早めに受診しましょう。